印刷の余白Lab. in 大阪、ということで4月のまだ桜の残る季節に、大阪へと単独出張してきました。大阪で訪れた工場見学にしぼって今回はお届けしたいと思います。

____ 1日目 _____

まず初日お伺いしたのは、加工紙メーカーのヨシモリさん。USJのあるユニバーサルシティ駅をひとつ通り越したJRゆめ咲線の終点、桜島駅が最寄りになります。

<ヨシモリ株式会社>
http://yoshimori.co.jp/

製紙工場にもいくつかの種類があり、紙をパルプから漉いている抄紙工場もあれば、用途に合わせてベースの紙に加工をし、意匠や機能をグレードアップさせた紙をつくる工場もあります。ヨシモリさんは後者で、紙とホイルや蒸着フィルムを貼合(てんごう)してメタリックな紙をつくったり、グラビアによるパール塗工や着色、そしてそれらをタック加工する技術を持っています。最近のラインナップでは『デザインのひきだし9』にも実物が綴じ込まれているクニメタル コグチ(色カード紙にアルミを貼り合わせてグラビア着色したメタリック紙)など非常に特徴的な紙をつくられています。

加工は主にロールで行われています。貼合・グラビアをワンパスで行う機械は全長でゆうに50m近くあろうかと思われる大きな機械。この他にも、グラビアや貼合を工程別で行う小さな機械(といっても十分大きいのですが)があります。

機械のサイズに圧倒されつつも製造工程を見ていくなかで、おやっと思ったのが、タックの加工をするロールを拝見しているとき。近寄って見るとタックにする紙じゃなくセパレーター(剥離紙)のがわにノリをつけて紙と貼り合わせています。なんで??これは紙の側にノリを塗ると紙がノリを吸ってしまうため。そのため、タック加工するときはセパレーターに、ホイルを貼合する場合はホイル側にノリをつけ、紙には直接ノリを塗らないようにしているんですね。

こうした加工紙に強いヨシモリさんの特徴は、ある程度のロットがまとまればオーダーで紙をつくってくれるということ。見本帳に含まれているものならば「ベースはこの見本の紙がいいけど表面にこっちのホイルを貼ってほしい」なんていうのも材料に在庫があるものなら1週間くらい余裕をもっておけば対応してくれます。好みの紙が作れるだけじゃなく、金銀パール系の紙が使いたいけど廃盤しちゃうと困るし、輸入紙だと増刷するときに国内在庫がないケースも……といったことを考えると、必要なときにつくってもらえるというのはメリット大きいかも。

どんな紙をつくっているのか興味のある方は、サイトから見本帳の申込みができますのでぜひ問合わせてみてください。

※以下は写真をクリックすると、各工場のその他の写真も見れます

____ 2日目 _____

二日目にお伺いしたのは、様々な貼箱をつくっている村上紙器工業所さん。天神ノ森という雅な名前の場所にあります。周りは閑静な住宅地。この街並にさりげなく工場がある感じは、ちょっと東京の板橋区あたりに近い印象も。

<村上紙器工業所>
http://www.hakoya.biz/

貼箱とは、板紙などを中芯に、表面に化粧紙(洋紙・和紙)を貼り合わせた箱のことです。ウェブサイトを見ていただけると分かると思うのですが、村上紙器さんでは非常に意匠性の高い箱や複雑な構造の箱も手掛けられています。

設備を見せていただくと非常にシンプル。村上紙器さんでは貼箱はほぼ手作業で作られているため、断裁機、罫線や隅切りの機械、隅を止める大きなホチキスのような機械と、あとは肝心の紙を貼る作業用の機械くらいで、それぞれの大きさも印刷機に比べれば小さなものです。貼箱を貼っていく作業台も、向かい合わせに4~6人くらい立っていたらいっぱいくらいのスペース。

少しだけ貼箱の制作も体験させていただいたんですが……け、けっこうスピードと正確性との戦い、集中力要ります。シンプルなC式(ミとフタをかぶせるもの)の貼箱は、すでに中芯が箱の形になっていて、それをくるむように紙を貼っていきます。流れていくコンベアの上で紙と箱を貼合わせるのですが、ニカワを塗った化粧紙が近づいてきて、そこに位置を合わせながら中芯をそっとのせ……たらササッと押さえて側面も一面ずつ貼って押さえて貼って押さえて……で、できた!

すばやく作業するのが大事なのは作業効率だけでなく、ノリとして使っているニカワは冷えると固まってしまうため、作業の速さが箱の出来も左右してしまうからなんです。これを皆さん、日に何百個と作っていくわけですね。大変。

代表の村上さんはウェブサイトの更新もそうですが、貼箱のワークショップを開催されていたり、その様子をUstreamで配信するなど様々な方法で貼箱についての情報を提供してくださっています。印刷所や加工の現場を知る機会というのはなかなかないので、こうしたかたちで積極的に情報公開してくださっているのは嬉しいですし、こちらも励みになりますねー。そうした村上さんの熱くオープンな姿勢と職人としてのしっかりしたものづくりのバランスが素敵です。

お近くの方、大阪に行かれる予定がある方はぜひご連絡して伺ってみてはいかがでしょうか。村上さんの熱いトークが聞けると思いますw

____ 3日目 _____

大阪最終日にお伺いしたのは、太成二葉産業さん。近くには竹尾の大阪見本帖があります。この日はfeng feel designの阪口くんも見学に同行してくれました。

<太成二葉産業株式会社>
http://www.tims-net.co.jp/

まず広い空間にどどーんと現れるのが大きなオフセット印刷機2台。菊全6色機「DUO」(2コーター)と、菊全7色機(1コーター)の「PLUS1」です。でかっ。

「DUO」はその名の通り2つのフレキソコーターをもつ印刷機で、アタマとおしりにひとつずつコーターがついています。アタマのコーターでパールやメタリックを下地に刷って、その上にフルカラーを乗せてニスコート、なんてことも可能です。「PLUS1」はちょっと変わったセッティングになっていて、7色の印刷ユニットのあとにコーターがあり、さらにコーターのあとに、もう1色の印刷ユニットがついています。この印刷ユニットがプラスワン。

印刷機の上を見上げてみると、昔ながらの銭湯にあるドライヤーのような形の黒い物体。これ、自動で量を調整しながらインキ供給する機械なんだそうです。さらに足下にも気になるものが。フレキソの樹脂版なんですが、よく見るとベースが金属版。通常の樹脂版よりも凸部分が垂直に近い状態で、エッジが綺麗に出そうな感じです。これも自社内で製版をしていらっしゃるそうです。

印刷機のことばかり書いてしまいましたが、太成二葉さんの特徴はむしろ後加工にあります。別のフロアにあるのはスクリーン印刷機、PPや蒸着フィルムを貼合する機械、転写フィルムから転写する機械などなど。別棟の工場には箔押しの設備もあるとか。全体的に大型の機械が多いですが、だいたいのことは社内でできてしまうんじゃないでしょうか……。

もともと、主にこうした後加工をされていたところから印刷も始めたという流れだそうで(確かに後加工の機械は年季はいってます!)、そうすると変わった印刷機のセッティングも納得です。例えば社内でアルミ貼合の紙をつくって印刷するとなると、地に白を引く場合やプライマー(地塗り)が必要な場合も出てくるし、そのためにはDUOのような印刷機が合っているわけですね。

規模のある印刷所でも、変わった後加工は個別にできる工場へ外注に出している場合も少なくありません。しかし様々な後加工を社内で試すことができれば、加工と印刷の相性も社内でノウハウを貯めていけますし、こうした加工の組合わせでまだまだ新しいことが実現されてそうな予感がしました。

また、サイトのトップから「TIMS-DM会員登録」に登録すると、太成二葉さんの技術がふんだんに使われたDMが毎月届きますので、実物を見てみたい方はぜひチェックしてみてください。



それ以外にも、大同印刷所の白木さんと輸入紙について話したり、小野商店の河手さんの和紙ディレクションの話、そしてfeng feeldesign の阪口くんと終電まで話し込んだり、いろいろ思うところ多かったのですがまだまだ消化しきれないので、徐々にこれからの活動に反映していければと思います。本当、観光の余裕が全くないくらい密度の高い旅行でした。お付合いいただいた方々にこの場を借りて感謝します。どうもありがとうございました。