[crew]
印刷/有限会社コスモテック
紙/五條製紙:ジー・ピー・エス株式会社
野口尚コ

事務所名に「ラボ」という名前を付けたのは、ただ制作するだけでなく、印刷・紙の新しい使い方を考えていきたいという思いがあったからでした。そして今回、とうとう新しい加工開発のご紹介です!わーわー(本人が一番楽しんでいたり)。

元になっているのはコスモテックさんの得意技「つばめ返し」。
箔を押した上から目の細かいロール紙をはさんで空押しすると、その部分だけ磨りガラスのようなつや消しになる加工です。

そもそも箔押しした箇所というのは「フィイルムに一度蒸着された金属粒子が、糊と一緒に転写されている状態」。たっだら、似たような製法で加工されたキラピカ系の紙にも「箔を使わないで」同じことができるんじゃないの……?
というのが始めのアイデアでした。つまり、金属感のある紙に直接、つや消ししちゃう、ということ。

ちょうどキラピカ紙の豊富なラインナップをもっている五條製紙さんに注目していたこともあり、「スペシャリティーズの表面につばめ返し、できませんか?」とコスモテックさんに思いつきレベルでご質問してみました。

しばらくして「できました!」とご連絡が。ちょっと思いつき報告のノリだった私としては「え、何がですか?」と、間の抜けた反応。まさか本当に実験を進めていただいていたとは……。

実際はつばめ返しの方法で単純に加工すればできるわけではなく、いろいろと工夫と試行錯誤があったようで。
プレスに使うロール状の紙が、スペシャリティーズの表面に食い込んでしまったり、どうにも一筋縄ではいかなかったようなのですが、最終的には「プレス用ロール紙+食い込み防止ペーパー」を重ねてプレスすることで成功。
うーん、全てが機械化されていないからこそ、工夫次第でどうにかなっちゃうんですね。

肝心の加工テストについては五條製紙さんにもご相談して、スペシャリティーズのなかから製法の違う紙をピックアップし、それぞれにどのような効果があるか検証しています。

【 200番台:アルミ箔貼付けタイプ 】
金属を薄ーくのばしたアルミ箔を、紙の上に貼合わせているタイプ。地の紙が柔らかいためか、ぐぐっと押込んだ感じは出るものの、擦れたようなカサカサした表面になってしまうのが惜しい。工業製品っぽさは出るかもしれません。この加工であえて選択するかと言われると……。しかし、表面を引っ掻いたようなステイン模様など、アルミ箔タイプでしか表現できない地柄の紙もあるので「加工の効果はあり」というところでしょうか。

【 300番台:ペットフィルム貼付けタイプ 】
スペシャリティーズを代表するシリーズと言っても良いペットタイプ。鏡のような光沢や、カラーバリエーション、ホログラムなど、とてもとても魅力的な紙なのです、が。がしかし。フィルムを紙に貼付けているため、高熱・高圧をかけるこの加工では、フィルムと紙の間に蒸気が発生してしまって、よーく見るとポコポコとフィルムが浮き上がっているのが分かります。ホログラムタイプではほとんど見られないのですが、そもそもフィルムがプレスした後に反発して戻ってしまうので、ツヤ消し感があまり分からなくなってしまいます。
うーん、ペットのラインナップが使えないのは残念ですが……このシリーズには向いていないようです。

【 1000番台:アルミペースト塗工タイプ 】
紙の表面に、ペースト状の金属を塗ったタイプ。ザンダースメタリックなどもこのジャンルですね。表面のピカピカ感が弱いためか、元の質感との違いは弱め。しかし本来のつばめ返しとは違った意味で面白いのが、プレスしたところが、ちょっと梨地のようなタオル地のような柔らかい質感になるんですね。紙全体に広く加工して、紙の地の質感を変えるように使うと面白いかもしれません。上品でおとなしい仕上り。

【 GTシリーズ:ペット蒸着転写タイプ 】
一度フィルムに金属粒子を定着させて、金属の粒子だけ紙に転写しているタイプです。フィルムは転写後に剥がしてしまうので、紙の表面には金属粒子だけが貼られている状態です。フィルムが貼られているわけではないのですが、ペットタイプにも近い鏡面の輝きが特徴。通常の箔押しに一番近い加工の紙ですね。
そして、案の定、これが一番美しい仕上り。ピカッとした地に、シュワッとしたつや消し。おおお、なんだこれー。
箔押しの箔は、GTシリーズのような「鏡面」感はないので、これは新しい面白さ。この加工で魅せるだけでなく、ミラーを生かしつつ使うと面白いツールになりそうな気がします。

さて。最後にこの加工の名前ですが、紙を2枚挟み込んでプレスするため、コスモテックさんと私の間では通称「ダブルクロス」と呼んでいたのですが、この新しい加工の名前も考えて良いですよーとのこと。うーん、カッコイイ路線もアリかなとも思ったんですが、元のつばめ返しと兄弟でもありますので「霧隠れ」なんてどうでしょうか。

近々、サンプル制作してNEW加工としてデビューさせたいなという目論みもあり。またその後の進捗がありましたらご報告したいと思います。